第七章

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「驚かないのかよ」 「驚いてるよ」 柳瀬の表情は、言葉とは裏腹に先ほどから微塵の変化も見られない。 「でも」 だって、親だぞ。 いや、それ以前に殺人だ。 正当防衛だから、違う? 本当に? 嫌な汗がこめかみを伝う。 いつの間にか三限の開始時間は大きく過ぎていたが、まったく気にならなかった。 「夏目って、一体何者なんだ?」 先ほどから感じていた恐怖を、俺は改めて口にした。 「さあね。でも、宗佑は宗佑だよ」 柳瀬は、はじめと変わらない声のトーンでそう言った。 理解が追いつかない。 もはや渡辺のことなんて完全に忘れていた。 渡辺が医学部に進学しなかったことを知るのは、まだ、もう少し先の話だ――
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