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「なんかきっかけとかあったの?」
「ん?」
「文転」
「ああ。いや、別に何ってことはないんだ。ただ、臨床医になるべきは夏目のような奴だし、研究って言ったって、柳瀬くらい好きじゃないと続かないもんだよなあと思って」
なるほど。
あの二人と比較したのか。
「柳瀬って今どうしてるの?」
「まだ大学に残ってるよ。今博士過程」
「そっか。院か」
「うん。ノーベル賞はあいつに任せた」
「はは、柳瀬なら取れるかもな」
研究に没頭していてご飯を食べ忘れたと言っても、あいつなら信じる。
「連絡、取ってるの?」
話の流れとしてはそれほど逸脱してはいないはずだが、その質問をするのに、少し声が上ずった。
「柳瀬?それとも夏目?」
「どっちも」
「柳瀬は、たまにね。二人で居酒屋行ったりもするんだぜ」
「へえ」
あんなことを言ってはいたが、やはり柳瀬にとって渡辺はちゃんと友達だったんだと思う。
きっと、夏目にとってだって。
「夏目は?」
「いや、そっちは全く。あいつのことだから多分連絡先変わってないと思うんだけど、どうにも勇気がね」
渡辺がわずかに表情を曇らせる。
「そっか」と答えた俺の声も自然とトーンが落ちた。
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