第七章

20/60

75人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
「夏目、結局彼女とどうなったの?」 今日、これを聞くつもりはなかったのだが、ぱっと口から言葉が出た。 なんだかんだ言って、ずっと、気になっていたからだろうか。 「彼女?ああ、別れたよ」 「え」 「三池って結構情弱だね」 渡辺がははっと爽やかに笑った。 「マジで?」 「嘘ついてどうすんだよ。結構すぐだぜ。一年持たなかったかな」 「そうなのか……」 何だか、拍子抜けしてしまった。 八年前に見た写真の女性の顔は、もうぼんやりとしか思い出せなかったが、果たして彼女にこいつらの友人関係を壊すほどの価値があったのかと思ってしまう。 「夏目は、別に久保さんのこと好きだったわけじゃないから」 「え?どういうこと?」 「そのままの意味だよ。多分、夏目には、他に好きな子いるよ」 「はあ?なら、何で……」 ダメだ。 全く意味がわからない。 「さあ、わかんないけど、でも、多分そうだよ」 「それでいいのかよ、お前。それに、その彼女、久保さん?もさ」 「当時は、結構へこんだんだけどね。今なら、縁がなかったんだなって思える。久保さんも、きっと、そうなんじゃないかな」 「そういうもんなのか?」 恋愛経験の乏しい俺には、理解できそうもない話だ。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加