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「どうかな?長年の片思いとじゃ、釣り合いとれないと思うけど」
小さく首を傾げた渡辺は、あの頃と何も変わっていない。
やっぱり、いい奴だ。
お前がいいならいいと言いつつも、俺のことを考えて言葉を発してくれているのがよくわかる。
こいつに愛される女は、きっと幸せだ。
「いいよ。のった」
「よし」
満足そうな笑みを浮かべた渡辺は、ポケットからすっとスマートフォンを出したと思うと、夏目宗佑の名前をこちらに向けながらその電話番号をタップした。
「え、おい」
「善は急げっていうでしょ」
呼び出し音がかすかに聞こえるが、それが繋がる気配はない。
やがて、留守番電話の案内サービスの音が流れた。
渡辺は、「ちぇ、残念」と呟いてから、画面に向かって、「おい夏目、今度飲み行くぞ。電話しろ」と荒い声を発して通話を切った。
その行動力には、本当に驚かされるばかりだ。
「はは、やっぱりすごいね、お前」
「そ?」
その笑顔が心地いい。
「俺も、電話かけた方がいい?」
「いいよ。お前の方から女に電話かけて、もう諦めるから!って宣言するのもおかしいでしょ」
「それくらい、してもいいけどね」
「かけたいなら止めないぜ」
俺たちは顔を見合わせて笑いあった。
八年前、あの頃、もっとこいつと話しておけば良かったと、心の底からそう思った。
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