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「はい、なんでしょうか」
「先生っておいくつですか」
年齢?
「僕ですか?今年で二十七になります」
答えながら、童顔だから随分と若く見えたのだろうと推測する。
「見えないですよね。未だに高校生と間違われるんです」
事実だ。
年相応に見られることはまずない。
大学生と言われることは日常茶飯事だし、高校生と見られることもそれほど珍しくはない。
「あの、先生ってこの学校のご出身ですか」
男は、突然そんなことを尋ねてきた。
「あ、いえ。僕は隣の……」
駅の方を指差す。
そこに自分の通っていた高校があるのだが、私立で少し名のある学校であるため、言いづらかった。
「すみません」
「あ、いえ」
謝られてしまうと、余計申し訳ない気分になる。
変な気回しをせずに、堂々と言うべきだったか。
しかし、彼はどうして俺の出身高校なんか気にするのだろうか。
様子を観察しようと、その表情を凝視すると、わずかに落胆の意図が見て取れる。
まるで、俺にここの卒業生であってほしかったみたいだ。
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