第七章

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「あの、彼を探している経緯を伺っても?」 俺の質問に対して、少し警戒したような表情を見せた彼は、言葉を選ぶようにして「その方の彼女のご家族から頼まれまして」と返してきた。 「彼女」 そうか、あいつに、そんな存在がいたのか。 いや、いたとしても不思議ではない。 しかし、だとすれば。 「その、彼女さんの連絡先を教えてもらうことはっ」 俺は勢いに任せて、言葉を吐いた。 しかし、何かが引っかかる。 あれ? 「あれ、でも、なんで」 どうして、彼女がそいつを探すんだ。 そもそも、彼女なら当然すでに死んでいることも知っているはずだろう。 どういうことだ。 俺の疑問を悟ったのか、男は「実は」と先ほどよりも一段階低い声を発し、「その彼女、すでに亡くなってるんです」と続けた。 「え」 「だから」 「あ、いたっ」 生徒の声が飛び込んできたことで、会話が中断される。 「センセー、もう保護者の人結構集まってるよー。早くー」 「ごめん、すぐ行くっ」 まずい。 もうそんな時間か。 俺は腕時計を見ながら、急いで答えた。 「あの、後ほど、連絡先渡します」 昨日、もう連絡はしないと誓ったばかりなのに、まさかこんなに早く破られることになるとは思ってもみなかった。 しかし、この事実を彼女に告げないわけにはいくまい。 もしかしたら、八年前の兄の死の真相がわかるかもしれないのだから――
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