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「航平」
いつも強気な麻子の声が震えていた。
自分だって怖いと思っていたはずなのに、不思議なことに麻子の様子は逆に俺を奮い立たせた。
俺が、しっかりしないと。
「大丈夫だよ」
何の根拠もない発言だったが、とりあえず強がるくらいの気力はあった。
「航平」
「ばかっ」
麻子が俺の方に向かって少し動いたことで、バランスを失った足元の鉄板が崩落する。
俺と麻子は一緒になって、下へと投げ出された。
「航平っ、航平っ」
必死に俺を呼ぶ麻子の声が聞こえた。
「ん……」
目を開けると、眼前に麻子の泣き顔があった。
「大丈夫っ?大丈夫、航平?」
ゆっくりと体を起こす。
若干背中が痛かったが、骨に異常があるようなことはなさそうだ。
意識もはっきりとしている。
落ちた瞬間は死ぬんじゃないかと思ったが、先ほどまで自分たちがいた場所を見上げてみると、たいした高さじゃないことがわかる。
何だか、テンパって馬鹿みたいだ。
「大丈夫?ねえ、航平」
「ん?ああ、俺は全然。麻子は?大丈夫か?」
一応聞いてみたが、体勢的にはどうやら俺が麻子の下敷きになっていたようで、見るからにたいした怪我はなさそうだ。
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