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「私は大丈夫だけど……」
そう言いながら、麻子の頬をぼろぼろと涙が伝った。
俺はぎょっとして、「何?どっか痛めた?」と聞いたが、麻子は必死に首を振った。
「なんだよ、そんな怖かったのかよ」
いつも気丈に振舞っていただけに、麻子の涙を見るのは初めてのことで、俺は動揺してしまった。
「違うもん」
麻子は泣きながらも、はっきりと俺の言葉を否定する。
「何が違うの?怖かったわけじゃないってこと」
「怖かったけど、違うんだもん」
「何?どういうこと?わかるように言ってくれよ」
「だって、航平が、航平が死んじゃったらどうしようかと思って」
「俺?」
麻子の涙の原因が自分だとわかって、俺は驚いた。
「航平が死んじゃったら、そしたら」
麻子の嗚咽が激しくなる。
「縁起でもないこというなよ。俺が死んだりするもんか」
「本当に?」
「もちろん。俺が麻子より先に死んだりするもんか。麻子が心配だっていうなら、もう怪我だってしないよ」
「ほんと?」
麻子の表情が明るくなる。
俺は麻子をいつも通りに戻そうと、必死に言葉をつないだ。
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