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麻子との関係を絶つという、ずっとやろうとしていてできなかったことが、渡辺と少し話しただけで驚くほど簡単にできるような気がした。
しかし、まさか一日目にして連絡を取る羽目になろうとは。
耳元で電話の呼び出し音が鳴っていた。
繋がった音がして、「もしもし。航平?」と麻子の声が聞こえた。
まだ研修医の麻子は救命救急に配属されてかなり忙しそうにしていたはずだが、それでも不思議と俺のかける電話はいつでも都合よくつながった。
「うん」
「どうかした?」
気の強い性格に不釣り合いな甘ったるい声だ。
この声が、好きだった。
ずっと、聞いていたいと思っていた。
「いや、あのさ、今日、徹のこと探してるって人と偶然会って」
「え」
電話の向こうで麻子が息を飲むのがわかった。
「その人は徹の彼女の家族に頼まれたんだって言ってたんだけど、どうも、その彼女っていうのが既に亡くなっているみたいで」
「どういうこと?」
麻子が警戒しているのがわかる。
「ごめん、俺もそんなに詳しくは知らないんだけど、ともかく、そういうことみたいで。それで、その、徹の彼女の家族って人に、麻子の電話番号渡しちゃったんだけど、事後報告でごめん」
「ううん、それはいいけど」
しばしの沈黙の後に、麻子は「その彼女が亡くなったのっていつの話なの?」と質問をしてきた。
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