第七章

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「わからない、ごめん。聞いとくよ」 加護の兄貴とその彼女の家族がどのようにつながっているのかはよく知らないが、加護を通せば彼とは話をできるだろう。 「いや、いいよ。私のとこに連絡きたら直接聞く」 「そう、わかった」 再び沈黙。 八年前、結局わからないままだった徹の死の理由。 それが、今になってわかるのかもしれない。 「ねえ、航平は、あれは事故だったと思ってる?」 麻子は、突然そんなことを言った。 「わからない」 素直な答えだ。 事故、自殺、他殺。 そのどれもが、ありそうで、なさそうで。 「麻子は?どう思ってるの?」 「私は……」 麻子はその後に何か自分の考えを続けようとしていたように感じたのだが、しかし、彼女の口から続いた言葉は「私にもわからない」の一言だった。 「そっか」 三度目の沈黙に、話の終焉を悟った俺は、「じゃあ、まだ。詳細わかったら連絡するよ」と言って電話を切った。
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