第七章

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週末が明けて学校へ行くと、加護さんが女性を助けるためにレストランのテラスから飛び降りたという話題で持ちきりになっていた。 どうやら、店の中にうちの生徒がいたらしい。 隣のクラスのそいつは、芸能レポーターにでもなったかのような調子で、その時の様子をみんなに事細かに話して聞かせていた。 どこで話が繋がったのか、先日通り魔事件に巻き込まれた早川夏帆を助けたのも同じ刑事だという話になり、加護さんは一躍時の人と化していた。 「加護、お前の兄ちゃんすげえな」 当然、加護直樹がその注目を一身に浴び、大勢の生徒に取り囲まれることとなっている。 加護さんは骨折して入院しているという話だが、それほど重症ではないのか、弟直樹の方はあっけらかんとした様子で、兄貴自慢をして話題をさらに加熱させていた。 徹の彼女の話について詳細が知りたかったのが、これはちょっとそれどころじゃないかな。 俺は話の中心にいる加護に話しかけることを諦めていたのだが、ホームルームが終わると、そいつは自ら俺の元へやってきた。 「ねえ、コーくん、コーくんがくれたメモって誰の電話番号?」 「え」 まさか加護の方からその話をしてくるとは思わなかった。 てっきりお兄さんが直接引き受けた話かと思っていたのだが、俺が予想していた以上に加護直樹もこの件と関わっているようである。
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