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「あの、その話さ、俺に預けてくれない?」
「え?」
「俺から、直接早川に話しちゃダメかな」
「ああ、そういうことか。いいんじゃない?多分そっちの方がよく伝わると思うし。俺よくわかってないんだけど、早川が探してた人とコーくん知り合いなんでしょ?」
「うん」
「なら、そうだよね、俺もコーくんが話した方がいいと思う。じゃあ、お願いね」
「うん、ありがとう」
加護直樹はにっと笑って、自分の席へと戻っていった。
今時珍しいくらい素直な生徒だ。
驚くほどに純粋で、まるで穢れを知らない。
両親不在の中、よくぞこれだけまっすぐに育ったものだと思う。
年齢に対して少し幼すぎるようにも思える話し方だが、不思議と精神年齢が低いという印象は与えない。
男子には珍しく常に笑顔で、機嫌を損ねていることなど見たことがない。
彼の目に、世界がどのように見えているのか、知りたいと思った。
それにしても、そうか、早川が。
早川夏帆は俺が顧問を務めるバスケットボール部に所属していた三年生だが、半月ほど前に行われた大会で既に部活を引退していた。
バスケットボールにはウィンターカップがあるが、そこまで残る三年生はうちのような弱小校では少ない。
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