第七章

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「内海、麻子さんっていうのが、その妹さんの名前?」 「そう」 「じゃあ、お兄さんも内海さん?」 「ううん、内海っていうのは麻子の旦那の名字で、旧姓はニノマエ」 「ニノマエ?」 「漢数字の一って書いて、そう読むんだ。珍しいだろう?一徹っていうのが、早川の探し人の名前だよ」 「そう」 夕方、俺と早川は麻子の病院近くのファミレスにいた。 午前中の空きコマに状況をかいつまんで説明したら、なんと今日これから会おうと言ってきたのである。 夜勤への出勤前なら時間が取れるというが、そういう問題ではない。 俺の仕事を一体何だと思っているのか、早く帰るために随分と骨を折った。 たまたまバスケ部が休みの日だから良かったものの、あまりにも急すぎるだろうと言いたくなる。 しかし、麻子相手にそんな喧嘩をしても意味がないことはこれまでの経験からよくわかっていた。 「これから来る、その麻子さんって人は、お医者さんなんだよね」 「うん。といっても、まだ研修医だけどね」 「そっか、すごいね」 早川は、学校で見せる明るい様子とは異なって、先ほどからほぼ表情に変化がない。 一体、今、何を考えているのだろうか。
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