第七章

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「そうなんですか」 早川は静かに返事をして、再び視線を麻子へと戻した。 そうだ。 今、徹のあだ名の由来なんて全く重要な問題ではない。 「それで、その、徹さんって……」 「死んだよ。八年前に」 その事実については、昼休みの段階で既に告げていたことであったが、それでも早川は瞳をやや大きくして押し黙った。 「ねえ、お姉さんの話、もう少し、詳しく聞かせてもらえない?」 「え?」 早川は少し目を見開いて、それから、覚悟を決めるようにひとつ大きく瞬きをした。 「八年前の十一月のことです」 早川が澄んだ瞳で麻子を見つめながら話を始めた。 十一月というワードに、とくんと、心臓が鳴った。 「当時、姉は高校二年生でした。もともと仲は良かった方だと思うのですが、その頃、少し姉に避けられているような気がしていました。帰ってくると、すぐに部屋に閉じこもってしまい、夕食だと呼んでもなかなか出てきませんでした。両親は共働きで忙しくしていたためか、あまり気に留めていないようでしたが、私が、もっと早い段階でお姉ちゃんを直接問い詰めていればと、今でも思います」 料理が運ばれてきて会話が中断する。 俺たちはウエイターが料理を並べる間、一言も発しなかった。
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