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「航平、早く食べたら?私そろそろ行くよ」
いらないと言おうとして、すんでのところで思いとどまる。
小学校の頃、担任だった女性教師が言った「食べ物を粗末にしてはいけない」という言葉が浮かんで、俺は目の前に置かれた料理を腹の中にかき込んだ。
俺が食べ終わるよりも先に麻子が席を立つものだから、俺は大急ぎですべてを流し込んで、その背中を追った。
「おい、待てよ麻子」
「何?」
「何、じゃないだろう。何だよあれ。早川が可哀想だろう」
「どうして」
どうしてって。
「そりゃあ」
「お兄ちゃんのせいで姉が死んだのに私が謝罪しないから?」
「そんなこと……」
「航平も、お兄ちゃんが子供の父親だと思ってるんだ」
「え」
だって。
そりゃあ、そういう話じゃ……。
「違うのか?」
「さあ、どうだろうね」
「おい」
「私は、違うと思うよ」
麻子は、驚くほどきっぱりと言い切った。
一体その自信はどこから来るのか。
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