第七章

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「あ、えっと、この病院に勤めている友人がいまして」 今日の出来事をどのように説明しようかと思案していると、向こうから「内海麻子さん?」と尋ねてくるから驚いた。 「え?」 「あ、すみません。彼女がここの看護師なんです。先日いただいたメモとお名前が同じだったので」 「ああ、なるほど」 学校で飛び交っている噂のせいか、超人的なイメージが先行していたが、彼女というワードで一気に俺の中での加護さんの人間らしさが上昇した。 「直樹が来て、少し聞きました。といっても、その内海さんが、早川さんの探していた方の妹さんだということくらいですか」 「そうなんです。実は」 俺は先ほどのファミレスでの出来事をかいつまんで説明した。 「そんなことが」 「はい、俺、麻子が一体何を言っているのか全くわからなくて」 加護さんは口元に手を当てて、やや視線を下ろした。 何かを考えるようなその表情に、加護さんの目には俺とは違う何かが見えていることがわかった。 「加護さんには、わかるんですか」 「いえ、わかるとは違うんですか、その内海さんの言うことを真に受けるなら、それほど選択肢はないかと」 選択肢? 本当に、徹が子供の父親でないんだとすればってことか? 徹でないなら、一体。
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