第七章

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「あ、てかさ、さっき病院入る時救急車来てて、ドラマみたいだなぁと思いながら患者さん降ろすところ見てたら、中から出てきた若い医者がえらくかっこいいんで驚いちゃった。それこそ俳優みたいに。実際いるんだな、ああいう医者」 まさかここで殺人事件の詳細を話し出すと思っていたわけではないが、先ほど久高と呼ばれた男性の口から出てきた言葉が、あまりにもミーハーな内容なので少し驚いてしまった。 警察の人もこういう話するんだ。 「ああ、それ多分夏目先生ですよ。俺の処置してくれたのもその人です」 「え」 何の気ない加護さんの返答だったが、夏目という名前が出てきたことに驚いた俺は、思わず声を漏らした。 「先生?どうしました?」 「先生?」 先生という単語に首を傾げた男性に対し、「ああ、弟の高校の担任です」と加護さんが返す。 それからもう一度、その視線を俺に向けた。 「あの、夏目って、夏目宗佑ですか?」 記憶の糸をたどるように少し視線を泳がせた加護さんは、最後にピタリと俺に焦点を合わせて、「はい、そういう名前だったと思いますけど」と言葉を返す。 「あの、夏目先生とお知り合いなんですか?」 「あ、はい。大学のときに同じクラスで」
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