第八章

3/63

75人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
時間的には高校一年生としてはかなり勉強していた方だと思うし、時間だけは過ぎたが問題集はまったく進んでいない、ということもない。 それなりに順調なはずだった。 それでも、俺の毎日は空っぽだった。 別に友達がいなかったということはなかったが、親友と呼べるそれには出逢ったことがなかった。 平凡で、どこまでも普通な毎日。 そこに現れたのが、彼女だった。 彼女の何が特別だったということはない。 初めに思ったのは、美人だな、ということ。 綺麗だとは思ったけど、だからと言ってどうするわけでもなく。 俺が駅に着くまでの間、斜め前、大通りをはさんだ向かいの道を彼女が歩いていた、ただそれだけだった。 それから、何度か塾の帰りに彼女を見かけるようになった。 気にしていなかっただけで、もっと前からいたのかもしれないが、とにかく、俺はその塾の前を通るときには、彼女がいないかどうかを気にするようになっていた。 俺の塾は週三日だったが、どの曜日でも彼女を見た。 たまたま曜日がかぶっていただけかもしれないし、彼女は毎日塾へ行っていたのかもしれない。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加