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結局、駅まで二人を見ながら歩いた。
別に腕を組んでいるわけでも手をつないでいるわけでもない。
友達と言われればそう見えるし、なんとも言えなかった。
それから、何度か二人でいるのを見かけた。
自分でも、無理矢理時間を合わせているのはわかっていたし、何をやっているんだと自分に問いかけたくもあったが、どうしようもなかった。
そうして、春が過ぎ、夏になって、彼女はいなくなった。
木曜日だけではない。
全ての曜日から、彼女は姿を消した。
色々と時間をいじっても見たが、再び彼女を目にすることはなかった。
それでも、俺の人生は何も変わらない。
秋が過ぎ、冬を越え、春を迎えて、本格的に受験モードになってくるが、俺の毎日は、相変わらず平凡だった。
「晃多、家庭教師なんてどう?」
母親がそんな提案をしてきたのは、俺の成績が伸び悩んでいるのを心配してのことだろう。
家庭教師を雇うお金は安くはないはずだが、それでも、私立の医学部の学費と比べれば、雲泥の差だ。
「カテキョ?」
「ええ、今年、東京大学の理科三類に合格した人で、いい人がいてね」
「理三!?」
驚いた。
その場所の敷居の高さは誰でも知っている。
大学受験の最高峰だ。
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