第八章

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天才は教えるのが下手。 それは、結局のところ俺の思い込みだった。 いや、それは、夏目宗佑が天才であり、そして努力家でもあったからかもしれない。 夏目宗佑は、とにかく教えるのが上手だった。 感動したのは、俺の間違った考え方を瞬時に理解し、どこがおかしいのかをきちんと説明してくれることだ。 要領を得ない説明をしても、すぐに何を言っているのかわかってくれた。 夏目宗佑は人の気持ちを読む天才だと思った。 「晃多は、ここで小球と台の重心を考えて、台の移動距離を出そうと思ったんだろ?」 「これ見て、よくわかりますね」 俺はまだ何もしゃべっていない。 夏目宗佑は俺の出した間違った答えを見ただけだ。 「俺も、同じようにミスったことあるからね」 「ほんとに?宗佑さんでも間違えることあるんですか?」 俺は彼のことを宗佑さんと呼んでいた。 はじめは夏目先生と呼んでいたのだが、先生はなんだか恥ずかしからやめてくれと言われて、そうなったのだ。 宗佑さんがそうしてくれと言うのならばもちろんそう呼ぶが、俺は、師匠でも大先生でも神様でもよかった。 あらゆる敬意を宗佑さんに向けたかった。 「あるよ。いっぱい間違えた。わからない問題もたくさんあったし」 その言葉がどこまで本当なのかはわからなかったが、宗佑さんがそう言ってくれると、何だか自分も頑張れるような気がしてくるから不思議だ。
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