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「あの、大学じゃ……」
恐る恐るだったが、それでもその質問を口にしたのは、宗佑さんが見せる穏やかな表情は、孤独な人間のそれではないと感じたからだ。
宗佑さんはにこりと笑って、静かに口を開く。
「友達、って呼ぶのはおこがましいかもしれないけど、一緒にいてくれる人はいるよ。尊敬できる人たちだ」
よかった。
自分でも何様だと思ったが、本気で安心した。
「宗佑さんって、大学でどんなキャラなんですか?」
「もうちょっと愛想が悪いね。そいつらすぐ馬鹿なこと言うから、俺がどんどん口の悪い奴になっていく」
そう言って宗佑さんが笑う。
やっぱり、友達のいない宗佑さんなんて想像もできなかった。
俺の記憶の中にある、彼女とともに歩いていた宗佑さん。
あの時の宗佑さんだって、決して一人ぼっちには見えなかった。
だって、あんなに楽しそうに笑っていたじゃないか。
学校で、友達が誰もいなくて。
じゃあ、あそこだけが本当の宗佑さんの居場所だったのかな。
「好きな人とか、いないんですか?」
少ししつこいかと思ったが、宗佑さんと彼女が並んで歩いている絵が、どうしても頭から離れなかった。
「いるよ」
宗佑さんは、悩むそぶりも見せずに即答した。
俺は、どうしてだか、それはあの人のことだと確信して。
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