75人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
「告白とかしないんですか?宗佑さんなら絶対いけると思うけど」
あの時、二人が恋人同士だったかなんて、たいした問題ではないのだ。
彼女は、絶対に宗佑さんのことが好きだった。
間違いない。
「しようとしたんだけどね、ダメだった」
「ダメって、振られたってことですか?」
告白してないのに振られるという状況もよくわからない。
他に、男がいたってことかな。
「そういうことになるかな。言う前に、逃げられちゃったから」
「え」
そんな。
「はは、かっこ悪いよね」
「宗佑さんはかっこいいですよ」
俺の知っている限り、一番だ。
「ありがと」
「ほんとに、尊敬してますから」
こんなセリフをよくもまあいけしゃあしゃあと。
しかし、不思議と恥ずかしいという気持ちはなかった。
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
宗佑さんは柔らかに笑って、「でも」と言葉を続けた。
「俺は、そんなに立派な人間じゃないよ」
そう呟いた宗佑さんの表情には、言いようのない陰があった。
そこに現れていたのは、ただの深い哀しみだった。
見たこともないほど、深い深い哀しみ。
たった一つしか違わないのに、宗佑さんと自分の過ごした時間には、何千年という年月の差があるのではないかと思わせた。
最初のコメントを投稿しよう!