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「宗佑さん、俺頑張って、合格しますから」
何か、宗佑さんを喜ばせたかった。
そのために、俺ができることといえば、成績を上げることくらいしかない。
そう思って勉強した。
誰かのための勉強は、それまでよりもずっと楽しかった。
「宗佑さんっ、見てっ、見てっ」
期末テストの成績表が配られたその日、俺は宗佑さんの到着を心待ちにしていた。
宗佑さんが部屋に入るや否や、俺は成績表を開いて見せた。
全教科において目に見えて成績が上がっていた。
校内順位もこれまでで最も良い。
この成績ならば、国公立の医学部も十分に射程圏内だ。
「おお」
宗佑さんが驚きと喜びを混ぜたような表情を見せる。
それが俺に、一際大きな高揚感を与える。
やった、と叫びそうになった。
「ナイス」と宗佑さんが笑うのが、何より嬉しかった。
そのとき、宗佑さんが俺の背後にある本棚に目を留めるのがわかった。
いつもと何か違うことあったかなと思案すると同時に、自分の失態を悟った。
「法律に、興味があるの?」
宗佑さんは予想通りの言葉を口にした。
本棚には法律関連の本が積んであった。
昨晩配置換えをしようとして中断したままになっていたのを完全に忘れていたのだ。
いつもなら前に参考書を置いて隠しているはずの本だった。
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