第八章

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「あ、いえ、興味ってほどじゃ……」 「死刑問題に、関心が?」 宗佑さんはさらに質問を重ねる。 当然だ。 その手の本も通常じゃ考えられない量が置いてある。 「まあ、ちょっと」 俺の歯切れが悪いのを見て、「秘密だった?」と宗佑さんが尋ねる。 俺はなんと答えて良いものか迷ってしまった。 「そういうわけじゃないです。ただ、俺、医学部志望なんで」 自分でも答えになっていないと思った。 宗佑さんは話の続きを待つようにじっと俺を見つめた。 困ったな。 どこから話したものか。 「あんまり有名な事件じゃないんで多分知らないと思うんですけど、六年前にある殺人事件があったんです。その犯人の息子が、同級生でした」 宗佑さんの黒目がわずかに大きくなる。 「特に、仲が良かったわけじゃありません。クラスも違いました。父親の逮捕後、みるみるうちに彼が居場所をなくしていくことに気付いていましたが、何も、行動を起こしませんでした。いじめと呼んでいいようなことがあったと思うんですが、詳細を知ろうともしませんでした。その彼が自殺したのが、中学一年生の夏のことです」 「自殺……」
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