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「晃多は、その子を救いたかったの?」
「後から思えば、です。それだって、あいつの自殺がなければ、そんなこと、思いもしなかったはずです。でも、自分には関係ないって思うのが嫌で、法律とか刑罰、被害者心理、加害者心理、そういう本買いあさっちゃって」
「死刑問題は、また少し話が違うよね」
「わかってます。さっきの話はきっかけで、それが直結してるわけではないんですけど、でも、法律とか裁判とかの本で一番興味を引いたのがそれでした。死んでしまったら、もう、取り返しがつかない」
「晃多は死刑に反対?」
「そうですね。やっぱり人の命を奪う権利は誰にもないという気がします」
「死刑賛成論者が口にするのは、大概遺族感情だけど」
「それも、わかっているつもりです。って、身内を殺されたことがない俺が言っても仕方がないと思うんですけど、でも、遺族感情はもちろん、税金の問題とか、再発防止の観点とか、どんな理由を聞いても、それが人を殺める理由になるとは、とても思えないんです。変ですよね、俺」
「晃多と同じように考える人もいるよ」
「でも、やっぱり外に向けて発信するような思想じゃないと思います。公平じゃないんですよ、俺。犯人にだって理由があったんじゃないかとか、思っちゃうんです」
本当に公平じゃない。
もしあいつが被害者の息子で、親の後追い自殺だったら、犯人は死をもって償うべきだと主張したかもしれない。
その程度だ。
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