第八章

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「今から社会をやるんですか」 地理はセンター試験対策の授業を受けているが、その程度だ。 世界史や日本史はとてもじゃないが、自分がそれを二次試験で使うとは思えなかった。 「晃多が法学部に入りたいなら」 即答だった。 ごくりと、自分が唾を飲む音が聞こえた。 俺の、やりたいこと。 「もちろん、理一や理二に入ってから進振りで法学部に行くという道もある」 今までこれと信じていたものが、がらがらと音を立てて崩れていく。 俺は自分が何を選択するべきなのか、全くわからなくなってしまった。 ただひとつわかることは、宗佑さんは本気だということだった。 「少し、考えてもいいですか」 「もちろん。よく考えた方がいい。ご両親や先生にも相談するといいよ」 そう言ってにこりと笑った宗佑さんは、「さて、先週の添削分だけど」と何事もなかったかのように授業を始めた。 まるで、俺が最後に選ぶ答えがわかっているようかのだった。
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