第八章

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「俺、法学部目指します」 俺がその言葉を口にしたのは、あれから一週間後のことだ。 「そう」 宗佑さんはそう言って笑顔を見せた。 驚いた様子はない。 「両親や先生には相談してみた?」 「はい」 考えさせてくれとは言ったが、宗佑さんと話した翌日の朝には俺の心は決まっていた。 思えば、長い間ただの日課のようにして勉強していた。 医学部進学という目標が仮初めのものであったことには、自分自身ずっと前から気付いていたはずだ。 ただ、見ないように目を背けてきた。 宗佑さんとの会話は短い時間のものだったが、これまで自分を取り巻いていた霧のようなものがぱっと晴れたように感じたのは、勘違いではないはずだ。 自分の進むべき道が、はっきりとわかったような気がした。 その晩に父と母に話をした。 父は驚いた様子だったが、母は何も聞かずに「わかった」と答えた。 そのどこかした安心したような表情を見て、俺は初めて母が俺の法学部への興味に気が付いていたことを知った。 「弁護士になりたい」と言った俺の言葉を、両親は揃って応援すると言ってくれた。 ずっと、見えない糸に操られていたような気がしていたが、その糸を切ることの容易さに拍子抜けしてしまった。
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