第八章

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担任の教師は、はじめこそ無謀だと言って止めたが、俺がすでに決めていることを知ると、渋々ながら選択授業変更の手続きをとってくれた。 まだ納得はしてくれていないようだが、無理もない。 それは、俺が結果で見せるしかないことだと思っていた。 「社会のプリント作ってみたんだけど、無駄にならないようで、よかった」 そう言って宗佑さんが取り出したプリントのクオリティーの高さと量の多さに、俺は唖然とした。 空欄などを交えつつ、手書きで作られたそれは、一言で言って美しかった。 「センター用に勉強してるって言ってたからとりあえず地理で作ってみたけど、科目の選択はもう決めた?もちろん日本史と世界史でもいいと思うけど、学校の友達とかから何か情報もらったりしてみた?」 俺が何も答えないのを見て、「ごめん、ちょっと先走ったかな」と宗佑さんが眉を下げた。 「違いますっ」 俺は慌てて否定する。 もちろん、違う。 ただ、驚いているのだ。 今から社会の勉強を始めるなら、新たに別の家庭教師なり何なりを探さないといけないと思っていたが、まさか宗佑さんが社会を教えてくれるとは思わなかった。 「宗佑さんって社会もできるんですか?」 「できると言っていいかはどうだろう。ただ、高校時代はあんまり文理とか受験科目を気にしないで勉強してたから、一応大学受験範囲の地歴はおさえていると思うけど」 文理や受験科目を気にしないで勉強する高校生が一体日本にどれほどいるだろうか。 俺は宗佑さんの偉大さにただただ驚くばかりだった。
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