第八章

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「どういう意味ですか?」 「二葉亭四迷がロシア文学を訳した際に、I love youに対するme tooに相当する言葉を『死んでもいいわ』と訳したっていう逸話から来ているんだ」 「へー」 宗佑さんの博識ぶりに感心するとともに、昔の文豪に対して文句をつけてやりたい気分になった。 そんな遠回しなことをしていて、本当に通じ合っていたのだろうか。 「何通りかってことは、他にもあるんですか?」 「文学的な返しだと、『傾く前に出逢えて良かった』とか『遠回りして帰ろう』っていうのもあるし、あとは、普通だけど『そうですね』や『私もそう思います』なんていうのもあるね」 それならまだ何となく理解出来る。 ただ、やはり告白の際にこれらの言葉を使おうとする人の気持ちは微塵もわからない。 そこで、俺はふと興味を抱いて尋ねた。 「宗佑さんだったら、なんて答えますか?」 「俺?」 宗佑さんはきょとんとした表情を見せたあと、遠くを見つめて、「俺だったら――」と続けた。
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