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「そして昨日、彼女がその男と一緒にレストランへ入って行ったんです。私はもう、気が気でなくて」
「それで……?」
「おかしかったんです、私。男がいない隙に彼女の元へ行って『あいつは誰なのか』と問いただしました。気が付いたら、彼女をテラスから突き落としていて……」
昨夜の記憶が蘇ったのか、最上さんは瞳孔を開いて、肩を震わせた。
なるほど、それで殺人未遂。
話の流れとしては、相手の男の方に手が出そうなものだが、ここで女の方に行くという思考もあるのか。
「テラスというのは、何階ですか」
「三階です」
三階。
厳しいな。
大怪我をしていないといいが。
「最上さんは、その、高橋さんを殺そうと思っていたのですか」
「そんなっ、まさかっ」
最上さんは慌てた様子で首を振った。
「彼女は私の女神なんです。殺すなんて、そんな、そんなこと……」
最上さんは、考えられないとでもいうように首を振った。
罪を軽くしようと演じている様子はない。
おそらく言っていることは本当だが、どこまで認められるだろうか。
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