第八章

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「そちらのエレベーターから十二階まで上がって右手になります」 「どうもありがとうございます」 病院の受付スタッフにお礼を言って、言われた通りにエレベーターホールへと向かった。 腕時計に視線をやると、十八時ちょうどをさしていた。 十八時過ぎって何分だろう。 早すぎたかな。 エレベーターを降りて、病室の外に掲示されたプレートをひとつひとつ確認しながら廊下を進む。 高橋千佳という名前はすぐに見つかった。 ゆっくと病室の扉を開けると、中はカーテンで区切られていた。 もう一度ネームプレートで彼女のベッドの場所を確かめてから、深呼吸を一つ挟んでカーテンを引いた。 「失礼します」 カーテンの向こうのベッドには、一人の女性がいた。 まるで俺が来るタイミングを完璧に把握していたかのように、彼女はベッドの上で起き上がって、俺を待ち構えていた。 俺は、その女性を見て、思わず息を飲んだ。 彼女だ。 一目見て、わかった。 そこにいたのは、九年前、ひたすらに目で追い続けた、あの時の女性だった。 「こんばんは」 彼女は短くそう言った。 口元には小さな笑みが浮かんでいた。 「病院まで押しかけて、申し訳ありません。最上浩二の代理人として参りました、弁護士の倉科晃多と申します」 俺は何とか平静を保ちながら、用意していた名刺を差し出した。
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