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「あの」
「はい、何でしょうか」
「高橋さんは、最上浩二を恨んではいないんですか」
弁護士として不適切な発言であったことは言うまでもないだろう。
しかし、どうしても聞かずにはいられなかった。
小さく首を横に振った高橋さんは、「恨んではいません」と短く答える。
さらに追求したい衝動に駆られたが、さすがに思いとどまった。
「そうですか。あの、差し支えなければ怪我の状態を教えていただけませんか」
「今日検査したので結果はまだですが、おそらく大きな怪我はしていません」
「そうですか」
俺は安堵を顔に出さないように努めて平静を保った。
「それは何よりです」
運がよかったと言おうとして止める。
俺の言葉じゃない。
「幸運でした」
高橋さんが自分で言った。
しかし、その直後に表情を曇らせる。
俺はたまらず、「どうされたんですか」と尋ねた。
「いえ、私が原因なのに、加護さんにご迷惑をおかけしてしまったのが、申し訳なくて……」
加護さん?
誰だ?
最上さんから聞いた昨晩の話から、レストランに一緒にいたという男性のことだろうと推測した俺は「交際相手の方ですか」と尋ねた。
その質問に興味が含めれていたことは否定しない。
加護という苗字にどこか聞き覚えがあるような気がしたが、思い出せなかった。
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