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「いいえ、違いますっ」
高橋さんは驚いたように首を振る。
「ただのご近所さんです」
「あ、そうなんですか」
なんだ。
てっきり。
きっと最上さんも勘違いしていたのだろう。
そんなものが事件の引き金になったのかと思うと、何だかやるせない。
「あの、その方は」
「この病院に入院されています」
「え」
意図的に隠したのかどうかはわからないが、その男性の怪我は最上さんの話には登場しなかった。
「それは……」
最上さんが手を出したのだとすればまずいと思ったが、高橋さんは暗い表情のまま「加護さん自ら、飛び出してくださったようです」と言葉を落とした。
不謹慎と思いつつもほっとする。
その男性には悪いが、それならばその怪我の責任は最上さんの負うところではない。
とはいえ少し気になるのも事実だ。
後でその人の病室も訪ねて見ようかと思った。
「あの、では具体的な金額などのお話ですが……」
先ほど作ったばかりの書類を出して、示談についての説明を行う。
まさか今日中に使うことになるとは。
とんとん拍子に話が進むことに対し、ただただ驚いていた。
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