第八章

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「本当に、ありがとう」 「あ、いえ」 少年はじっと俺を見る。 向こうも俺に見覚えがあるのではないかと思われたが、しかし、これくらいの年齢の知り合いに はどうにも心当たりがない。 結局、どちらも声をかけることなく、駅に向かって歩き出す。 ほんの一メートル先を歩くその後ろ姿を見ながら、必死に記憶をたどった。 なんだ、どこで。 「あの」 俺が声をかけると同時に、その人はくるりとこちらに向き直って、「倉科?」と俺の名前を呼んだ。 その瞬間、過去の記憶が蘇った。 「三池、先輩ですか?」 高校生なんて、どんでもない。 当時からほとんど変わらない顔立ちのその人は、中学時代の先輩だった。 「すみませんっ」 「何が?」 「いや、さっき、タメ口」 「ああ、別にいいよ。何?俺のこと大学生だと思った?」 三池先輩は悪戯っぽく笑ったが、まさか高校生と間違えたとは言えない俺は曖昧に笑いながら頷いた。
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