第八章

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三池先輩は、中学生のときのバスケットボール部の先輩だ。 といっても、高校受験組である三池先輩と中学三年生でバスケットボールを辞めてしまった俺が一緒にプレーしたことは本当に数えるほどしかない。 期間にして二ヶ月に満たない程度である上に、基本的に中学と高校で練習も別だったものだから、ほとんど関わりがなかったといっても過言ではない。 かなり運動神経は良かったように記憶しているが、それすらも曖昧だ。 明るいとか人懐っこいとか、そんな月並みな印象しか残っていなかった。 「先輩、変わんないですね」 「よく言われる」 何度見てもとても年上には思えない。 顔立ちもさることながら、格好が若い。 ベージュのカーゴパンツに、ホワイトのTシャツ、ネイビーのパーカーとおよそ高校生の休日といっていい服装に、首を傾げざるを得ない。 「あの、先輩って今、何されてるんですか」 「俺?高校教師」 にっと笑った表情は、確実に十代のそれだった。 なるほど、教師か。 確かに、向いているかもしれない。 この人が子どもたちに慕われている様は容易に想像できた。
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