第八章

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「倉科は、克哉さんの事務所入ったんだっけ?」 「え」 克哉さんも同じバスケットボール部の先輩で、三池先輩よりも一つ上だが、中学からいた分、同時に部活に在籍していた時間は克哉さんの方が長い。 俺が辞めた後も二人は同じチームでプレーしていたわけだから、三池先輩が克哉さんのことを知っていること自体は何も不思議なことではない。 しかし、俺が克哉さんの法律事務所に入ったなんて、そんな新しい情報まで知っているとは思わなかった。 「何で知ってるんですか」 「克哉さんから聞いたんだよ」 「そんなに頻繁に会ってるんですか」 俺が途中で辞めてしまったからそう思っているだけかもしれないが、中学や高校の部活での繋がりなんて社会人になったらほとんどなくなってしまう。 克哉さんとだって、法科大学院の在学中に開かれた部の同窓会に参加するまで、何の連絡もとっていなかったのだ。 「お前、知らないんだっけ?俺、克哉さんに誘われて男ラク入ったんだよ」 「え、そうなんですか!?」 男ラクこと男子ラクロス部はアメリカンフットボール部と並んで、東大の二大強豪運動部だ。 週六だか週七だか知らないが、とにかく年がら年中部活ばかりしているという印象だ。 克哉さんがそこに入っていたことは同窓会の際に聞いたが、三池先輩までやっていたとは初耳だった。
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