第八章

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「医学部っていうから夏目紹介したのに、いつの間にか文一に合格してるんだから驚いたよ」 「何で、うちの親が?」 「うちとお前ん家すげえ近いの知ってる?それで、バスケ部の保護者会のときに仲良くなって、結構会ってるよ。かてきょの話も最初は俺にってことだったんだけど、まあ俺理二に滑り込んだだけであんま頭良くないし、ラクロス入るのも決めてたから、ちょっと厳しいと思って。それで、せっかくなら理三のやつ紹介してやろうかと思って探してたら、クラスの別のやつが夏目がいいんじゃないかっていうから」 「そうだったんですか」 思えば宗佑さんほどの人がそう何人もいるはずがないのだ。 単純に幸運だとは思っていたが、その確率について深く考えてみたことはなかった。 そうか、三池先輩が。 「ありがとうございます」 その言葉は自然に口から出た。 三池先輩はきょとんとした表情を見せる。 「俺、宗佑さんに救われたから」 「ほんと?」 「え」 「夏目に、会えてよかった?」 三池先輩がまっすぐに俺の目を見てそういうものだから、「はい」と答えた声が上ずった。
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