第八章

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「そっか。よかった」 心底安心したような表情を見せる三池先輩に、何がそんなに不安だったんですかと聞きたくなった。 しかし俺はその言葉を飲み込む。 聞くべきことじゃない。 そんな気がした。 「宗佑さん、あの病院にいるんですか?」 「そ。って言っても俺もさっき知ったんだけどね」 俺が不思議そうな表情を見せたのが通じたのか、「知り合いの見舞いに来たら、偶然担当医が夏目だってことがわかってね」と続ける。 「そうなんですか。それでこの後約束を?」 「うん。ちょっと、話したいことあって」 そう口にした三池先輩の表情は、怖いくらいに真剣だった。 「すみません、この後、事務所に戻らなくちゃいけなくて」 「まだ仕事か。大変だな」 「いえ」 その後三池先輩が近くのカフェに入って宗佑さんを待つというので、駅を前に俺たちは別れた。 宗佑さんと高橋さんが同じ場所にいるという事実が俺の頭の中をぐるぐると回っていた。
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