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「何?誰?」
克哉さんが俺のパソコンを覗き込んで尋ねた。
「被害者の隣人で、今回の事件に巻き込まれた人です。どこかで聞いたことある名前だと思ってたんですけど、今思い出して」
「剣道?なんでそんなの知ってんの?」
「俺親戚中警察官だらけなんですよ。うちだけ例外で。従兄弟が三兄弟で剣道やってて、一番上が全日本選手権出るっていうんで一回見に行ったことあるんですけど、その時の優勝者です」
「へえ、知らなかった。親戚中って伯父さんとか?」
「母方の祖父から始まって、伯父と息子の三兄弟、伯母と旦那と息子がずらっと警官です」
「うわ、それは確かに親戚中だ。むしろ、お前ん家にその余波がないことがすごいな。お父さん、別に警官なわけじゃないんだろ?」
「はい、父は普通のサラリーマンです。母もいわゆるOLですし、警察要素ゼロです」
母が警察幹部とのお見合いを断って父と結婚したことで親戚から疎遠だった時期もあるようだが、祖父の他界によってわだかまりはほぼ解消されていた。
「へえ。で、この全日本一位がなんだって?」
「あ、いや、事件現場にいて、なんか巻き添いで怪我したらしいんですけど、最上さんが傷付けたわけじゃないので多分関係ないです。ただ思い出したってだけで。すみません」
「ふーん」
克哉さんはこれといって興味もなさそうに自分の仕事へと戻る。
そうだ。
本当に関係ない。
俺も画面を消して、再び資料の作成へと取り掛かった。
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