第八章

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「現段階で私からお話しできることは以上です。何か困ったことや不安なことはありませんか」 「いえ、大丈夫です。ありがとうございます、私なんかのために色々やってくださって」 「いいえ。これが仕事なんですから、遠慮せずになんでも言ってくださいね」 最上さんは、初対面のときとは打って変わって穏やかな表情を見せながら「高橋さんはお元気ですか」と尋ねた。 今日ここへ来る前に高橋さんに会ってきたという話を先ほどしたばかりだった。 「はい、元気そうでしたよ。もう退院されてお仕事にも復帰されています」 検査の結果特に異常もなく、ほとんど無傷と言っていい状態だった。 本当に運がいい。 「それは良かった」 「最上さん、一つ、伺ってもいいですか」 「なんでしょう」 「どうして、あの方を?」 いつか、聞いてみたいと思っていた。 素敵な女性だとは思うが、いわゆる高嶺の花という表現がしっくりとくる人でもある。 何故、ストーカー行為を働くほどまでに、惹かれてしまったのだろうか。 「私みたいな者が、身の程知らずですよね」 「いえ、そんな」 「いいんです。わかっていますから。何故と言われると難しいのですが、一番の理由は、どこか寂しそうに見えたからでしょうか」 「え」 寂しそう?
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