第八章

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「わっ」 画面には登録のない電話番号が表示されていた。 必死に動悸を抑えて、通話ボタンを押した。 「もしもし」 『もしもし。突然のお電話失礼いたします。警視庁捜査第一課の加護と申します。倉科弁護士の電話で間違いないでしょうか』 右耳に礼儀正しい声が響く。 うそ? 本当に加護将晴? 「はい、倉科晃多ですっ」 声が裏返った。 というか、内容も違う。 フルネームよりも事務所名だろ、バカ。 『すみません、いきなり。少しお話を伺いたいのですが、時間を作ってはいただけませんか』 電話の向こうの男性は、端的に用件を述べた。 詳細な説明は何もない。 勝手に興味を抱いて調べていたからいいものの、そうでなければ一体何者なのかの検討もつかないはずだが、それでも構わないという意思が電話先から伝わる。 丁寧な口調ながら高圧的と言っていい態度だが、それでも不思議と不快には思わなかった。 「はい。ご都合のよろしい日時はありますでしょうか」 『ありがとうございます。では』 返答まで一瞬の間が空いたのは、おそらく俺の聞き分けがあまりにも良かったからだ。 しかし、それについて特に言及することもなく、淡々と日時についての話が取り交わされる。
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