第八章

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「加護さんも、その話をしに来られたんですか」 沈黙は、肯定だった。 「彼女は、何者ですか」 加護将晴は静かに尋ねた。 俺も、その答えが知りたかった。 「加護さんと高橋さんのご関係は?隣人だと伺いましたが」 「そうです。同じアパートの隣に住んでいます。先日偶然知り合って、その後近所のコンビニで会った際にストーカーのことを聞きました。会ったのは事件の日が三回目です」 三回目。 思っていたよりもずっと二人の関係が浅いことに俺は驚いていた。 「それで、一緒に夕食をとることになったんですか」 失礼だが、二人ともあまり社交的な人間とは思えなかった。 表情から意思が伝わったのか、「いや、何故かそういう流れになってしまいまして」と困ったように返す。 その様子からは、加護将晴が件の食事にあまり乗り気でなかったことが窺えた。 「どんなお話を?」 俺の問いに対し、加護将晴は俺の目をじっと見つめたまま黙った。 俺に話していいのかどうか思案しているのだとわかった。 「すみません、不躾な質問でした。答えなくていいです」 「いや」とすかさず言葉を返してきたことから、実際には俺に話したい、いや誰かに話を聞いて欲しいのだと感じた。 「初恋を、思い出す、と」 「初恋?」 その言葉を聞いた瞬間、九年前の記憶が鮮やかに蘇った。 宗佑さんのことだと、直感が働いた。
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