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「その話をする前に、加護さんが、高橋さんの何を疑っているのかを伺ってもいいですか」
何故、彼女の正体を追い求めるのか。
ずっとそれが気にかかっていた。
しばしの沈黙の後に、加護将晴はゆっくりと口を開いた。
「疑っていると表現すべきかわからないんですが、何故だか、あの日、彼女がわざと俺とレストランに入ったような気がしてならなくて……」
加護さんの言葉を聞いた瞬間、この数日俺の頭の中にかかっていた靄がぱっと晴れたような心地がした。
わざと。
そうだ。
俺もそれを思っていたのだ。
「いえ、すみません、変なことを口にしました」
「俺も感じました」
「え」
「ずっと気になってたんです。なんで、そんなことしたんだろうって。二人があまり親しくないならなおさらです」
なんで、そんな行動をとったのか。
彼女のことだ。
そこに、理由があるはずだ。
「すみません、荒唐無稽な話だと言われると思っていたので、まさか同意していただけるとは」
「いや、俺も何か確固たる理由があるわけじゃないんです。ただ、どうしてもそんな気がするというだけで」
いつの間にか一人称が俺になっていたが、気が付かなかった。
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