第九章

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「すみません、割って入って。増本の同期で、四係の久高です」 「夏目を知っているのか?」 「増本がそいつと再会した事件の担当でした」 事件? 不穏な響きに、思わず眉をひそめる。 「事件というのは?」 「その夏目君の知り合いが線路に落下して亡くなったというものです。事件当時彼も一緒にいたので事情聴取を行いました。事件と言っても、事故という結論になりましたが」 知り合いが死んだ? さっき増本はなんて言った? 翌年? 二年連続で、夏目の身近な人間が死に至ったということか。 「え?お前、参考人全員覚えてるのか?」 増本の場違いに高い声が響いた。 「悪いけど、そんな特殊能力ないよ。この間見かけたんだけど、気付いたのは後になってから」 「夏目に会ったのか?最近?」 「はい。ホシが病院にいるっていうので、聴取のために行ったんですが、その時見かけたんです。救命救急医をやっているようです」 救命救急医。 医者か。 そういえばさっき増本が理三っていってたか。 まあ、賢かったことは確かだろうし、それほど驚くことでもないが。
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