第九章

11/32
前へ
/507ページ
次へ
「ひまわりが、お嫁さんへのものというのは、何故?」 「ああ、それは。私は新参者なので直接お会いしたことはないのですが、その息子さんというのが、一時期このお寺に住まわれていたそうで、馴染みのものが多いのです。このひまわりの花は、毎年お嫁さんの命日の日にその方が持ってくるのだと伺いました」 「毎年?二十年以上も?」 「はい、そのように聞いています。ただ、あまり寺のものと会いたくないのか、いつももっと遅い時間だと思うのですが、今年は珍しいですね」 どういうことだ。 ここが夏目の墓だとすれば、先ほどの話にあった住職の友人というのが、邦浩の父、即ち宗佑の祖父で、その息子が邦浩、嫁というのは真沙美のことだろう。 ということは、邦浩と真沙美の命日が同じ? そんな偶然があるのか? いや、違う。 「普段寺の人間に会わないようにしているということは、毎年供えている本人の姿を見たわけじゃないということですよね」 「はい、そうですね。十年以上前に一度彼を見かけた者がいるそうで、他の年のひまわりもきっとその方だろうと言われていますが、ここ数年直接お会いになったという話は聞いていませんね」 十年以上前、その時はまだ邦浩が生きていた。 本人が目撃されているというのならば、なるほど当時このひまわりを供えていたのは邦浩本人なのだろう。 しかし、この九年間、邦浩の死後、邦浩に変わってここへ通い続けたのは、宗佑のはずだ。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加