第九章

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「宗家の宗ですか」 「ええ、その字です。中心などの他に、尊ばれる人という意味もある、素敵な字だ。宗佑の名前にも使われているね」 「宗佑という名前は邦浩が?」 「ああ。宗一郎の宗をとって、助けるという意味を持つ佑を加えた」 尊ばれる人。 助ける人。 そう聞くと、子供の幸福を願ってよく考えて付けた良い名前のように聞こえる。 しかし、あの親が。 「すみません、話が脱線しました。その、宗一郎とは、どのようなご関係で?」 「高校の同級生だったんだ。君のお父さんもよく知っている」 住職の友人という話を聞いたときからその可能性を考えなかったわけではないが、実際に父さんの名前が出てくると、やはり驚かずにはいられない。 しかし、父さんと同級生ということは。 「ちょっと待ってください。宗一郎は二十歳前後で子供を産んだということですか」 夏目がすでに子供を産んでいてもおかしくない年齢であることを考えると、父さんと同い年で曽孫がいる可能性があったことになる。 それは一般の常識とは随分とかけ離れているように感じた。
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