第九章

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「はい。亡くなりました」 詳細については聞かれなければ話すつもりはなかったが、住職は「そうですか」と言ったきり、それ以上追求しようとはしなかった。 ただ、その腑に落ちないような表情を見ながら、何か気にかかっていることがあるのだということを察する。 「ひまわりですか?」 「え?」 「いや、邦浩の死に納得していないようなので」 「ああ」とわずかに心得たような表情を見せる。 「それもありますが、お金が……」 「お金?」 予想もしていなかったワードに、俺は思わず首を傾げた。 「もう、八年になるかな。毎月、お金が送られてくるんだ」 「え?」 「初めは月に十万、しばらくすると二十万に、三十万に。今では五十万ほど」 話の流れから推察するに、住職はそれを邦浩が送ってきたと思っていたようだが、もちろんそんなことはありえない。 では、宗佑が? しかし、月に五十万、年間六百万はいくら医者とはいえ、二十七の夏目には大金だろう。
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