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「邦浩は、こういう字を書いたんですか」
「印象と違うかい?」
俺の思いを察するようにそう言いながら、缶と一緒に持ってきたであろう紙を一枚俺に向けて差し出す。
開くと、几帳面な細かい文字が紙一面にびっしりと書かれていた。
「写経ですか」
「うん」
「邦浩の?」
「うん」
「そうですか」
弱い人。
繊細な人。
脆い人。
臆病な人。
俺の中の邦浩が、そんな言葉で埋められていく。
一体、どんな思いで毎年ひまわりの花を買っていたのだろうか。
「お金には、手をつけていない。この八年で三千万近い金額になる」
三千万。
当然生活費も自分で賄っていたであろう宗佑が、ほぼ学生であったはずの八年間でそれほどの額を稼ぎ出すのはどれほど困難なことであっただろうか。
勉強に手を抜いたとも思えない。
どうしてそこまでと考えると同時に、何かに追われていたかったのではないかという答えが浮かぶ。
その時初めて、九年前のあの日、真実を明らかにできなかったことを申し訳ないと思った。
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