第九章

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「今後、宗佑と会う予定はあるだろうか」 「はい」という言葉はすんなりと自分の口から出た。 会わねばなるまい。 すべてを、終わりにしなければ。 「それなら、これを」 住職は畳の上に通帳と印鑑を置いた。 聞かずとも、そこに何の金が入っているのかはわかった。 ここに取りに来るようにと伝言せずに、自分にこれを託した意図を慮ると、わずかだが胸が傷んだ。 「確かに」 俺は通帳と印鑑を受け取った。 「ありがとう」 「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」 畳に手をついて軽く礼をしてから立ち上がった。 夏目に会う必要があることは確実だが、その前に調べなければならないことも多い。 晃多は何か知っているだろうが、あれは自分から俺に連絡してくるに違いない。 そういうやつだ。 あとは、加護か。 「失礼します」 深く頭を下げて、部屋を後にする。 頭の中に、今後自分が取るべき行動がどんどん書き込まれていった。
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