75人が本棚に入れています
本棚に追加
もちろんその質問に何か意味があるのだろうということくらいは承知していたつもりだし、特に腹が立つということもなかったが、しかしその考えるところを図り損ねた俺は「ない」とただ事実を口にする他なかった。
「多分、発端は高橋さんの衝動的な犯行です。殺人なんて非生産的な計画を立てるほど愚かな二人じゃないという意見には自分も賛同なので」
「それで?」
それのどこが俺の恋愛遍歴と関係があるって?
「それで、夏目宗佑がその隠蔽に手を貸した」
それでは最初に戻っただけだ。
何の疑問の解決にもなっていない。
「だから、そんなことに何のメリットが」
「高橋さんが警察に捕まらない」
「は?」
「だから、それ自体が夏目宗佑にとっての最大のメリットだったんですよ」
加護はまるでそれが答えだとわかっているかのように自信を持った口調で言い切った。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味です。好きだったんです、高橋さんのことを。だから、助けたかった」
もちろん俺だって二人の間に恋愛感情が存在することくらいは想定していた。
単純に利害だけで関係が築かれていたとは思っていないが、しかし。
「殺人だぞ。親を殺すんだ。この際、憎いかどうかなんて問題じゃない」
他人のために、できることじゃないだろう。
「そんなこと、夏目宗佑にとってはどうでもよかったんですよ。高橋さんよりも大切なものなんて、何もなかった」
「どうして、そこまで……」
「わかりません」と加護は静かに首を振った。
最初のコメントを投稿しよう!